山天大畜(大きな停止、大きな蓄積/)
cultivation:養成/building up power:力の構築
全て事を図るによし。
貯え養いてこそ広大に至らん。
有无妄然後可畜。故受之以大畜。
无妄ありて然る後に畜うべし。故にこれを受くるに大畜を以てす。
妄年妄想がなく、至誠の徳があって、その後に蓄えることができる。
畜はとどめる、たくわえる、やしなう、という三つの意味を兼ねる。
大いに止める、大いに蓄える、大いに養う。
また、大なる者が止める、大なる者が蓄える、大なる者が養うという意味でもある。
大畜は、小畜と対比され、大が小をとどめやしなう、つまり偉大な王者が人材を擁すること。また大いにとどめ、やしなうこと、実力をたくわえることを意味する。
大豊作の穀物が倉庫に山と積まれ貯えられているイメージ。
身辺にエネルギーが充満している時でじっとしておれない。何か新しい事をはじめたり、外に出て活躍したくなくなったりする時である。
運気は上々で、何事も進んでよく、積極的に出て実を結ぶ時といえる。
運勢が強いと自ずとその人に勇気と活気を与え、みなぎるようなパワーがそれとなく滲み出て、相手をひるませたり、強く立ち向かって行けたりすることができる物で、こんな時こそ大いに永年に蓄積された知識や研鑚された経験を活かして行動すべきで、何か計画があればぐずぐずしたり躊躇したりせず堂々と邁進すべきである。
また人間を教育したり、養成したりすることは特によく、そういった種類の仕事を始めることはこの卦にぴったり合った運気といえよう。
[嶋謙州]
この卦は風天小畜と比較される卦であります。小畜に比べて、蓄え方が強くかつ積極的であるという卦であります。復して新たに活動するときには、できるだけ大きな内容と、蓄積がなければなりません。内容、蓄積に欠けますと活動を新たにすることができませんから、大いに蓄えなければならないという卦であります。
[安岡正篤]
大畜。利貞。不家食吉。利渉大川。
大畜は、貞しきに利あり。家食せずして、吉なり。大川を渉るに利あり。
彖曰。大畜。剛健篤實。輝光日新。其徳剛上而尚賢。能止健。大正也。不家食吉。養賢也。利渉大川。應矣天也
彖に曰く、大畜は剛健篤実、輝光日にその新たなり。その徳剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止む。大正なり。家食せずして吉なるは、賢を養えばなり。大川を渉るに利あるは、天に応ずればなり。
象曰。天在山中大畜。君子以多識前言往行。以畜其徳。
象に曰く、天山の中に在るは大畜なり。君子以て多く前言往行を識りて、以てその徳を畜う。
初九。有厲。利已。
象曰。有厲利已。不犯災也。
初九は、厲きことあり。已むに利あり。
象に曰く、厲きことあり已むに利あり、災いを犯さざるなり。
九二。輿説輹。
象曰。輿説輹。中无尤也。
九二は、輿、輹を説く。
象に曰く、輿、輹を説く、中にして尤めなきなり。
九三。良馬逐。利艱貞。日閑輿衞。利有攸往。
象曰。利有攸往。上合志也。
九三は、良馬逐えり。艱貞に利あり。日に輿衞を閑えば、往くところあるに利あり。
象に曰く、往くところあるに利あるは、上志しを合するなり。
六四。童牛之牿。元吉。
象曰。六四元吉。有喜也。
六四は、童牛の牿。元吉なり。
象に曰く、六四の元吉なるは、喜びあるなり。
六五。豶豕之牙。吉。
象曰。六五之吉。有慶也。
六五は、豶豕の牙。吉なり。
象に曰く、六五の吉なるは、慶びあるなり。
上九。何天之衢。亨。
象曰。何天之衢。道大行也。
上九は、天の何うの衢。亨る。
象に曰く、天の何うの衢とは、道大いに行わるるなり。
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