雷水解(困難が解ける/雪解け)
物不可以終難。故受之以解。解者緩也。
物は以て終に難かるべからず。故にこれを受くるに解を以てす。解とは緩なり。
物事は、いつまでも苦しみ悩んでいることはできない。必ずそれを解決する方法があるものである。解は、文字どおり、解ける、解決すること。困難が解けて緩むこと。季節にあてはめれば春分のころにあたり、堅い氷が解け、万物いっせいに目覚めるとき。これまで苦しみ悩んだ難問も解決して新しい出発のときが来たのである。この機会を逃がしてはいけない。すばやく好機をつかむこと。ぐずぐずしていると機を逸することになる。
卦の形は春雷(震☳)と春雨(坎☵)を表わす。まさに春耕播種のときである。怠けて日を送ったのでは、一年の収穫がふいになる。厳冬を脱け出た解放感にひたるのもよいが、ここで気をゆるめてはいけない。
卦の象では、上の卦は震(☳)で、動くという意である。下の卦は坎(☵)で、艱難の意である。今この卦は、動いて艱難より抜け出した形を示している。
解の卦は屯の卦の形と対比させて意味を考えると分かりやすい。解の卦は、屯の卦の内卦の震(☳)の若い芽が、外卦の坎(☵)の寒気を突き破って、その外に躍り出た形である。
自然界では、寒気(坎☵)が地上を覆っており、そのために、地下では若い芽(震☳)が、伸び悩んでいるのだ。そこで、盛んに奮発して、ついにはこの寒気を突き破って、伸び進んできたのである。
解とは難の散ずるなり:艱難の解け散る場合に処する道を説く。
dissolution:解消
事は解けて、緩む時なり。
力量未だ、もう一歩の努力が実りをもたらさん。
永い間の苦労がようやく解消されて一筋の光明が見えてくるとき。
今までに苦労に苦労を重ね、努力してきたことがやっと実を結ぶことになるが、けれども運勢はこれからで今すぐ上々吉というわけには行かない。
ともすれば苦労してきたことが、気の緩みから一瞬にして灰燼に帰したり、折角治りかかった病気が油断して再びぶり返したり、一生懸命貯めた金がつまらぬ事であっというまに消えて終わったりする。
目処が着いて来たといおうか、今が一番大切な時で、こんなときはできる限り事を慎重に運び、決して手抜かりをしないこと。
しかし今から計画したり、やろうとしていることは芳しくなく、恐らくやり始めてもすぐに解消して終わらねばならぬから無駄なことはしない方がよい。
[嶋謙州]
ああだこうだとわかままをいって、都合の良いことばかり主張し、いがみ合ってみたところで、どうにもならない。そういうことをやれば結局解決することはできません。
そこで解の卦の大象をみますと、赦過宥罪―過ちを赦し罪を宥す、ということを説いております。
過失をした者は無罪放免し、また罪を犯した者には、できるだけ寛大に扱い、その罪を軽減して人心が伸び伸びとするよう一新することだと説いております。
実に頭が下がります。
易がここまで丁寧に教えておるのかと思いますと、初めて易を学ぶ人はびっくりしたり、しみじみと反省させられたりするのであります。
赦過宥罪、それで初めて悩みが解けるのであります。
[安岡正篤]
解。利西南。无所往。其來復吉。有攸往。夙吉。
解は、西南に利あり。往く所なければ、其れ来り復って吉なり。往くところあれば、夙くして吉なり。
彖曰。解。險以動。動而免乎。解。解利西南。往得衆也。其來復吉。乃得中也。有攸往夙吉。往有功也。天地解而雷雨作。雷雨作而百果艸木皆甲拆。解之時大矣哉。
彖に曰く、解は、険にして以て動く。動いて険を免るるは、解なり。解は西南に利あり、往きて衆を得るなり。其れ来り復って吉、乃ち中を得ればなり。往くところあれば夙くして吉、なりとは、往きて功あるなり。天地解けて雷雨作る。雷雨作って百果草木みな甲拆す。解の時大いなる哉。
象曰。雷雨作解。君子以赦過宥罪。
象に曰く、雷雨作るは解なり。君子以て過ちあるを赦し罪あるを宥む。
初六。无咎。
象曰。剛柔之際。義无咎也。
初六は、咎なし。
象に曰く、剛柔の際り、義咎なきなり。
九二。田獲三狐。得黄矢。貞吉。
象曰。九二貞吉。得中道也。
九二は、田して三狐を獲、黄矢を得。貞しければ吉なり。
象に曰く、九二の貞吉なるは、中道を得ればなり。
六三。負且乘。致冦至。貞吝。
象曰。負且乘。亦可醜也。自我致戎。又誰咎也。
六三は、負い且つ乗る、冦の至るを致す。貞しくとも吝。
象に曰く、負い且つ乗る、亦た醜ずべきなり。我より戎を致す、又た誰をか咎めん。
九四。解而拇。朋至斯孚。
象曰。解而拇。未當位也。
九四は、而の拇を解く。朋至りて斯に孚あり。
象に曰く、而の拇を解く、いまだ位に当らざればなり。
六五。君子維有解。吉。有孚于小人。
象曰。君子有解。小人退也。
六五は、君子維れ解くことあれば吉なり。小人に孚すことあり。
象に曰く、君子解くことあれば、小人退くなり。
上六。公用射隼于高墉之上。獲之。无不利。
象曰。公用射隼。以解悖也。
上六は、公用て隼を高墉の上に射る。これを獲て、利あらざるなし。
象に曰く、公用て隼を射るは、以て悖を解くなり。
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