パニック現象はなぜ起こるか~Mintzの実験

コラム
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Mintzは、パニック行動の生起要因に関して1つの実験を行いました。

Mintzの実験以前は、パニック行動は恐怖や不安などが引き起こす集団行動の1つだと定義されていました。

しかし、これら以外の要因も、これらの行動に関与しているのではないかと考えられるようになってきました。
Mintzはこの実験で、「報酬」を1つの要因として捉え、パニック行動との関連を明らかにしました。

実験は、まず20名前後からなるグループをつくりました。
彼らの前には入り口が小さく細くなっているビンが置かれました。
その中には円錐体の小さなかけらがたくさん入っていました。
その先には糸が付いており、その糸の先を被験者が1本ずつ持っていました。

被験者が1人ずつその糸を引っ張れば、円錐体のかけらは順番にビンの口から出るような仕掛けになっていました。
しかし、何人かの被験者が同時に糸を引っ張ると、その円錐体はビンの口で引っかかり、どの円錐体も抜けられなくなってしまいます。

模擬的に、群集が非常口に殺到する状況を作り出したのです。
順番に整列すれば、全員非常口から脱出できます。
しかし、皆がパニック状態に陥り、非常口に無秩序に殺到すれば、ほとんどの人が脱出できなくなってしまうというわけです。

この実験を被験者グループに行わせる際に、グループごとに異なった教示を行いました。

金銭報酬群
一定時間内に上手く取り出せた人には賞金を出します。
しかし、時間内に取り出せなかった人には罰金を課します。

集団行動促進群
グループメンバーがどれくらい協力して行動できたかどうか、その能力を測定します。

実験の結果は以下のようになりました。

金銭報酬群——16集団中12集団が出口に殺到(混雑)
集団行動促進群–25集団のうちすべてが制限時間内に終了。

協力すれば全員が時間内で終了できる課題であるにも関わらず、「時間内に取り出せなかった人には罰金がある」といわれたグループは、皆自分だけは先に取り出したいと考え、結局はほとんどのグループで、ビンの口に詰まらせてしまったのです。

人は、緊急事態に陥っても、ただ闇雲に「助かりたい」と思って行動するわけではないのです。
ある程度、自分の生命や財産などを守ることを考慮に入れて行動しているといえます。

それが、集団行動と合致しないときにパニック行動を引き起こすのです。
自分が得をするか損をするか分からない、という不安定な状況が原因の一因として考えられるのです。

※参考文献
Mintz, A.(1951). Non-adaptive group behavior.
Journal of Abnormal and Social Psychology, 4 6, 150-159.

集団と群集とは似て非なるもの

集団とは、集まっている人の資格と氏名が明らか。一定の役割分担、組織性があり、共通の目標に向けて一体感、集団規範があるのに対して、
群集は、そこにいる人が不特定多数であり、時間と場所を同じく集合しているが互いに匿名的、一定の役割配分なく組織性もない群れ。

群集の怖いところは、群集心理(衝動性、動揺性、興奮性、被暗示性、軽信性、誇張性、単調性、偏狭性、横暴性)
が悪く働くと過激な行動に走りやすいこと。

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