澤水困(くるしむ/困窮)
shortage:欠乏/exhaustion:消耗
意の如くならざる時なり。
黙して時期を待つべし。
升而不已必困。故受之以困。
升って已まざれば、必ず困しむ。故にこれを受くるに困を以てす。
のぼることだけを知って、止むことを知らなければ、必ず行き詰まって困窮することになる。
困は、困窮すること。囲いの中にある木が伸びようとして妨げられ、苦しみ悩む状態を示している。行き詰まり、押し切って進む力もなく、苦しみ悩むこと。
この卦は、困難である時に対処する道を説いている。
いろいろと無理や力不足がたたって現在非常に苦しんでいるときである。
こんな時は物質的なら金や物が不足して困ることになるし、精神的なら人間関係のトラブルが起きたり、過労から病気になったりすることもある。
運勢は無論弱衰運で、もし積極的に打ってでもすれば身の破滅にもなり兼ねないからくれぐれもはやまらないこと。
一に忍耐二に辛抱。この卦の時は極力耐えぬき、損害を最小限度に食い止めるよう努力すること。
無理を重ねているときは何をやってもダメである。
物事がなるときは、すべての段取りがスムーズに行く場合が多いことを知るべきだ。
じっと耐え、無理をせず頑張っておれば必ず次の機会に笑える時がやってくるもの。
[嶋謙州]
発展向上すると、注意しないとよく行き詰まる、困却し苦しむ。そこで困の卦をおいて、どういうふうにして初志をとげたらよいか、自分の運命をどうして開くかを教えております。
そこで大象には、致命遂志―命を致し志を遂ぐ、とあります。
どのような小さな仕事、事業であっても、一命を投げ打って初志を貫き目的を達することだ。
これをやりませんとせっかくやった仕事、あるいは発展させた事業も、ちょうど沢に水がなくなるように駄目になる。
易は行き詰まるということがありません。どこまでもクリエート、リクリエートしてやみません。それは場合によっては循環であります。
そこで升の卦の次に困の卦をおいて、いい気になり過ぎては駄目である、升ったから苦しむのであると戒めておるのであります。
[安岡正篤]
困。亨。貞。大人吉无咎。有言不信。
困は、亨る。貞し。大人は吉にして咎なし。言うことあれど信ぜられず。
彖曰。困。剛揜也。險以説。困而不失其所亨。其唯君子乎。貞大人吉。以剛中也。有言不信。尚口乃窮也。
彖に曰く、困は剛揜わるるなり。険にして以て説ぶ。困しみてその亨るところを失わざるは、それ唯だ君子のみか。貞し、大人は吉なりは、剛中なるを以てなり。言うことあるも信じぜられずは、口を尚べば乃ち窮するなり。
象曰。澤无水困。君子以致命遂志。
象に曰く、沢に水なきは困なり。君子以て命を致し志しを遂ぐ。
初六。臀困于株木。入于幽谷。三歳不覿。
象曰。入于幽谷。幽不明也。
初六は、臀株木に困しむ。幽谷に入る。三歳まで覿ず。
象に曰く、幽谷に入る、幽とは明らかならざるなり。
九二。困于酒食。朱紱方來。利用亨祀。征凶。无咎。
象曰。困于酒食。中有慶也。
九二は、酒食に困しむ。朱紱方に来る。用て亨祀するに利あり。征けば凶。咎なし。
象に曰く、酒食に困しむは、中にして慶びあるなり。
六三。困于石。據于蒺藜。入于其宮。不見其妻。凶。
象曰。據于蒺藜。乘剛也。入于其宮不見其妻。不祥也。
六三は、石に困しみ、蒺藜に拠る。その宮に入りて、その妻を見ず。凶なり。
象に曰く、蒺藜に拠るは、剛に乗ればなり。その宮に入りてその妻を見ざるは、不祥なり。
九四。來徐徐。困于金車。吝。有終。
象曰。來徐徐。志在下也。雖不當位。有與也。
九四は、来ること徐徐たり。金車に困しむ。吝なれど、終わりあり。
象に曰く、来ること徐徐たるは、志し下に在るなり。位に当らずと雖も、与あるなり。
九五。劓刖。困于赤紱。乃徐有說。利用祭祀。
象曰。劓刖。志未得也。乃徐有說。以中直也。利用祭祀。受福也。
九五は、劓られ刖たる。赤紱に困しむ。乃ち徐くにして説びあり。用て祭祀するに利あり。
象に曰く、劓られ刖たるるは、志しいまだ得ざるなり。乃ち徐くにして説びあるは、中直を以てなり。用て祭祀するに利あり、福を受くるなり。
上六。困于葛藟。于臲卼。曰動悔。有悔。征吉。
象曰。困于葛藟。未當也。動悔有悔吉。行也。
上六は、葛藟に臲卼に困しむ。日に動けば悔ゆ。悔いることあれば、征きて吉なり。
象に曰く、葛藟に困しむは、いまだ当たらざればなり。動けば悔ゆ悔いることあれば吉とは、行けばなり。
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