火澤睽(そむきあう時/不調和)
opposition:対立/disagreement:不一致
反目して変事を招く時なり。
明智と温顔を以って接すべし。
家道窮必乖。故受之以睽。睽者乖也。
家の道は窮まれば必ず乖く。故にこれを受くるに睽を以てす。睽とは乖なり。
家道が禍いを被って困窮すれば、必ず内部にさまざまな食い違いが生ずる。
睽は、反目すること。家庭の不和、意見の食い違い、矛盾相剋を示す。
火は上に水は下にと、向かうところが正反対で、しかも女同士のじめじめした陰性ないがみ合いである。嫁と姑の睨み合い、そんな感じの卦象である。
こんなときには大問題に取り組んではいけない。小さなことをこつこつやる心がけが必要である。嫁も姑も一家のなくてはならぬ成員であるように、万物すべて相互に矛盾する中にこそ、統一があり、進歩がある。矛盾を活きた形でとらえることが大切。
問題解決を外に求めるのではなく、内に眼を向けるべきである。まず内部を調えることが先決である。
豆知識:嫁と姑は仲が悪いのか
女性脳は、半径3メートル以内を舐めつくすように感じて、無意識のうちに支配している。その空間を自分の思い通りに制御できないと『見落としていることがある』感覚に陥り、不安と不快感が募り、ストレスがたまる。
嫁姑が互いにイラつくのは、この『制御領域』がぶるかり合うケース。
できる主婦は、台所やリビングをミリ単位で認知し、無意識のうちに完全制御している。
このため、自分の置いたものを動かされたり、動線をさえぎられることに大きなストレスを感じるのである。
女性脳にとってえこひいきされることは絶対の正義であり、妻と母の板挟みになって、どっちつかずの対応では許されないと説いています。
決して忘れてはいけないのは妻の味方になれるのは夫だけなので、夫は、絶対に妻の味方をしなければ、嫁姑問題はうまくいかないのです。
[出典:妻のトリセツ/黒川伊保子]
対立、にらみ合い、仲違い、敵対視、こういった状態にあるのがこの卦です。
別に対立していなくても現在何となく裏腹で気分がすっきりしないとか、何かやろうと思っても思うようにならないとか等がこの卦にあてはまるとき。
運勢は極めて悪いということはないが、しかし気持ちがはっきりとしないということは、まだ幸運の兆しが見えてこないことは事実で、無理に飛び出したり、攻勢に出たりすることは結局火傷をしたり、怪我をしたりすることにもなりかねない。
こういうときは必ず一歩譲って事態の様子をじっくり見なければならない。
下手に盲動するより、自己の能力、体力などの調整をはかり、過去の成果を振り返って見たりして明日へのスタミナを養い、機の熟するときを待った方がよい。
[嶋謙州]
家人は親しい集まりでありますから、そこは厳とした法則がなければなりません。そうでないと融和も欠き、永続もしません。
ところが家人の次に睽の卦をおいております。
睽という字は、目くじらを立てる、にらみ合うという文字であります。
従ってそむくという意味にもなります。
とかく人間は、家庭でもそうですが、まして組織や団体となりますと、仲が悪くなりやすく、にらみ合い、いがみ合います。これが睽であります。
この卦は上下とも女性の卦でありまして、女というものはとかくひとつの家に入って数人おるとにらみ合う、嫁と姑のように目に角立てやすい、それではいけませんので大象には、君子以同而異―君子同を以って而して異なる、とありまして、これは、あらわれるところは異なるが、その根本、あるいは本態において同和しなければならない、ということであります。
つまり、家庭とか親戚、朋友の交わりに、よくありがちな仲違いはよくない、仲良くしなければならないと、実によく教えている卦であります。
[安岡正篤]
睽。小事吉。
睽は、小事には吉なり。
彖曰。睽。火動而上。澤動而下。二女同居。其志不同行。説而麗乎明。柔進而上行。得中而應乎剛。是以小事吉。天地睽而其事同也。男女睽而其志通也。萬物睽而其事類也。睽之時用大矣哉。
彖に曰く、睽は、火動いて上り、沢動いて下る。二女同居して、その志しは行をを同じうせず。説んで明に麗く。柔進んで上り行く。中を得て剛に応ず。是を以て小事には吉なり。天地は睽いてその事同じ。男女は睽いてその志し通ず。万物は睽いてその事類す。睽の時用大いなる哉。
象曰。上火下澤睽。君子以同而異
象に曰く、上に火あり下に沢あるは睽なり。君子以て同じくして異なり。
初九。悔亡。喪馬勿逐自復。見惡人无咎。
象曰。見惡人。以辟咎也
初九は、悔亡ぶ。馬を喪う逐う勿くして自から復る。悪人を見れば咎なし。
象に曰く、悪人を見るは、以て咎を辟けんとなり。
九二。遇主于巷。无咎。
象曰。遇主于巷。未失道也。
九二は、主に巷に遇う。咎なし。
象に曰く、主に巷に遇う、いまだ道を失わざるなり。
六三。見輿曳。其牛掣。其人天且劓。无初有終。
象曰。見輿曳。位不當也。无初有終。遇剛也。
六三は、輿を曳かる。その牛掣めらる。その人天られ且つ劓らる。初めなくして終りあり。
象に曰く、輿を曳かるるは、位当らざればなり。初めなくして終わりあり、剛に遇えばなり。
九四。睽孤。遇元夫。交孚。无咎。
象曰。交孚无咎。志行也。
九四は、睽いて孤なり。元夫に遇う。交々孚あり。厲けれど咎なし。
象に曰く、交々孚あり咎なきは、志し行なわるるなり。
六五。悔亡。厥宗噬膚。往何咎。
象曰。厥宗噬膚。往有慶也。
六五は、悔亡ぶ。その宗膚を噬む。往くとして何の咎かあらん。
象に曰く、その宗膚を噬む、往きて慶びあるなり。
上九。睽孤。見豕負塗。載鬼一車。先張之弧。後説之弧。匪冦婚媾。往遇雨則吉。
象曰。遇雨之吉。羣疑亡也。
上九は、睽いて孤なり。豕の塗を負えるを見る。鬼を載すること一車。先にはこれが弧を張り、後にはこれが弧を説す。冦するにあらず婚媾せんとす。往きて雨に遇えば吉なり。
象に曰く、雨に遇うの吉なるは、群疑亡ぶればなり。
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