火地晉(進む/旭日昇天)
物不可以終壯。故受之以晉。晉者進也。
物は以て終に壮んなるべからず。故にこれを受くるに晋を以てす。晋とは進なり。
物事は、旺んな状態のままで、いつまでも動かないでいることはできない。必ず上に昇り進もうとする。晋とは、進むこと。明るい太陽が地上に昇り始めるとき。
『晋』と『進』の違い:『晋』は、日が昇り進む意であり、明らかであるという意を含んでいるが『進』は、ただ前に進むという意味であり、明の意を含んでいない。
この卦は、進んで行くことについての道を説く。
34.雷天大壮のように猪突猛進するのではない。時を得て全能力を発揮してゆく。地上に太陽が輝き始めたのである。希望の朝である。いまは、背伸びするくらいに仕事を引き受けても順調にこなせるときにある。
action:活動/progress:進行
運気盛大なり。されど移ろいやすき象なり。進んで可なり。
ただし、実力の範囲内に止めるべし。
働きかける。じっとしてはうだつが上がらない。常に活動性を持ち事に当たっていく。そうしなければならないのが火地晉のときである。運気も上々だし、動けば効果が上がる。
全て活動によってよい効果を見るのであるが、そうかといって何でもかでも動いたからといって上手く行くとは限らない。
身体のコンディションや、何かするにふさわしい状態にあるかどうか見究め活動することにより、その人の命運が決まるのである。
しかし、この卦の時は、何かしら身も心もむずむずして動きたくてしようがないときで、当然動かねばならない。常にうまずたゆまず誠意と努力を重ねて行く所に効果は見えて栄えて、なるほどやってよかったなあと思えるようになる。
[嶋謙州]
この卦は上卦が火で下卦が地であります。晉の卦といってもわかりませんので、上卦下卦を読んで火地晉という。こういうふうに固有名詞で覚えますとすぐ卦が浮かんできますから、たいへん便利であります。
大壯によって初めて進歩がありますから、この晉は「すすむ」と読むわけであります。
人の名前のときはだいたい「すすむ」と読んでおります。
その大象には、君子以自昭明徳―君子以って自らを明徳を昭かにす、とあります。
遯から大壯になり晉に至るということは、みずから備えている明徳を発揮し、天下万民を安んずるよう務めること、これが本当の晉であるということであります。
[安岡正篤]
晉。康侯用錫馬蕃庶。晝日三接。
晋は、康侯用て馬を錫うこと蕃庶たり。昼日に三たび接わる。
彖曰。晉。進也。明出地上。順而麗乎大明。柔進而上行。是以康侯用錫馬蕃庶。晝日三接也
彖に曰く、晋は、進なり。明地上に出ず。順にして大明に麗けり。柔進んで上行す。ここを以て康侯用て馬を錫うこと蕃庶たり、昼日に三たび接わるなり。
象曰。明出地上晉。君子以自昭明徳。
象に曰く、明地上に出ずるは晋なり。君子以て自ら明徳を昭かにす。
初六。晉如摧如。貞吉。罔孚。裕无咎。
象曰。晉如摧如。獨行正也。裕无咎。未受命也
初六は、晋如たり摧如たり。貞しければ吉。孚とせらるる罔きも、裕かなるときは咎なし。
象に曰く、晋如たり摧如たるは、独り正を行なうなり。裕かなるときは咎なし、いまだ命を受けざればなり。
六二。晉如愁如。貞吉。受茲介福于其王母。
象曰。茲受介福。以中正也。
六二は、晋如たり愁如たり。貞しければ吉。茲の介いなる福をその王母に受く。
象に曰く、茲の介いなる福を受くるは、中正を以てなり。
六三。衆允。悔亡。
象曰。衆允之。志上行也
六三は、衆允とす。悔亡ぶ。
象に曰く、衆これを允とす、志し上行すればなり。
九四。晉如鼫鼠。貞厲。
象曰。鼫鼠貞厲。位不當也。
九四は、晋如たる鼫鼠。貞しけれど厲し。
象に曰く、鼫鼠貞しけれど厲きは、位当らざればなり。
六五。悔亡。失得勿恤。往吉无不利。
象曰。失得勿恤。往有慶也
六五は、悔亡ぶ。失得恤うるなかれ。往くときは吉にして利あらざるなし。
象に曰く、失得恤うるなかれ、往きて慶びあるなり。
上九。晉其角。維用伐邑。厲吉无咎。貞吝。
象曰。維用伐邑。道未光也。
上九は、その角に晋む。維れ用て邑を伐つ。厲けれど吉にして咎なし。貞しけれど吝。上九は、その角に晋む。維れ用て邑を伐つ。厲けれど吉にして咎なし。貞しけれど吝。
象に曰く、維れ用て邑を伐つ、道いまだ光いならざるなり。
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