雷地豫(よろこび・たのしみの時/新機発動)
coution:警戒/enthusiasm:熱心,熱狂,強い興味
運気まさに到らんとす、今しばらく待て。
盛運くるべし。今は足るをもって佳しとせよ。
有大而能謙必豫。故受之以豫。
大を有して能く謙なれば必ず豫ぶ。故にこれを受くるに豫を以てす。
豫には三つの意味がある。「たのしむ」「おこたる」「あらかじめ」である。
「歓楽」にうつつをぬかせば「油断」して思わず失敗をする。「あらかじめ」警戒してゆかねばならない。
この卦は、上の卦は震の雷であり、下の卦は坤の地である。地の下にあった雷が、地の上に現れ出た形象である。ちょうど春雷が奮い動いて寒気が去り、それによって草木も芽を出して万物皆喜び楽しむのである。このことから、この卦を豫と名付けた。一年の気の象においては、旧暦三月の清明(四月上旬)に配当する。
重門撃柝。以待暴客。蓋取諸豫。
門を重ね柝を撃ち、以て暴客を待つ。蓋し諸を豫に取る。
門を二重に閉ざして拍子木を叩いて突然の侵入者に対して警戒する。
物事を安易に考えたり、喜びに溺れたり、油断したりがちの時であるから充分注意しなければならない。
運勢は春の訪れを思わせるような感じで無論上昇ムードに向かうときである。
だから強いには違いないが、まだまだこれからで始まったばかりといえる。
何事も成り易く、実行に移して良いようにも見えるが、注意しないと落とし穴があり、石橋を叩いて渡るように慎重によく計画を練ってから取り掛からないと、とんでもないことになるからくれぐれも用心が肝要である。
衝動的に行動したり、ろくに相手も調べずに契約したりすることは特に慎んで欲しい。
徐々に警戒しながら歩を進めることがこの卦のポイントで、そうすることがこの運勢にうまく乗って行く決め手になる。
[嶋謙州]
同人が大有になり、謙の美徳を養うと豫の卦ができる。
豫はあらかじめという字であります。言い換えますと、先が見え、準備できる。つまり余裕ができるのであります。
余裕が出来ますと物事を楽しむこともできる。そこで豫の字はたのしむとも読みまして面白い卦であります。
[安岡正篤]
豫。利建侯行師。
豫は、候を建て師を行るに利あり。
彖曰。豫。剛應而志行。順以動豫。豫順以動。故天地如之。而況建侯行師乎。天地以順動。故日月不過而四時不忒。聖人以順動。則刑罰清而民服。豫之時義大矣哉。
彖に曰く、豫は、剛応じて志し行わる。順以て動くは豫なり。豫は順以て動く、故に天地もかくのごとし。しかるを況んや候を建て師を行るをや。天地は順を以て動く、故に日月の過たずして四時忒わず。聖人順を以て動けば、刑罰清くして民服す。豫の時義大いなるかな。
象曰。雷出地奮豫。先王以作樂崇徳。殷薦之上帝。以配祖考。
象に曰く、雷の地を出でて奮うは豫なり。先王以て楽を作り徳を崇び、殷んにこれを上帝に薦め、以て祖考を配す。
初六。鳴豫。凶。
象曰。初六鳴豫。志窮凶也。
初六は、鳴豫す。凶なり。
象に曰く、初六の鳴豫は、志し窮まって凶なり。
六二。介于石。不終日。貞吉。
象曰。不終日。貞吉。以中正也。
六二は、石に介たり。日を終えず。貞にして吉なり。
象に曰く、日を終えず、貞吉なるは、中正を以てなり。
六三。盱豫。悔。遲有悔。
象曰。盱豫有悔。位不當也。
六三は、盱豫す。悔ゆ。遅ければ悔あり。
象に曰く、盱豫悔あるは、位当らざればなり。
九四。由豫大有得。勿疑。朋盍簪。
象曰。由豫大有得。志大行也。
九四は、由豫す。大いに得るあり。疑うなかれ。朋盍簪る。
象に曰く、由豫大いに得るは、志し大いに行わるるなり。
六五。貞疾。恆不死。
象曰。六五貞疾。乘剛也。恆不死。中未亡也。
六五は、貞にして疾む。恒に死せず。
象に曰く、六五貞にして疾むは、剛に乗ればなり。恒に死せず、中いまだ亡びざればなり。
上六。冥豫。成有渝。无咎。
象曰。冥豫在上。何可長也。
上六は、冥豫す。成るも渝ることあり。咎なし。
象に曰く、冥豫して上に在り、何ぞ長かるべけんや。
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