天地否(塞がる、暗黒時代/行き止まりの出口)
denial:否定/stagnation:沈滞,不振,不況,不景気
万事塞がりて通ぜず。隠忍自重すべし。
脚下照顧せよ、時機に至るを俟つべし。
物不可以終通。故受之以否。
物は以て終に通ずべからず。故にこれを受くるに否を以てす。
否は塞がって通じない。天の気と地の気は交わり調和することがない。気が交わることがなければ物事は塞がって通じない。
人間関係でいえば、上司の考えは部下に通ぜず、部下の考えは上司に通じない状態。これは上司と部下との間に生じた否である。
すべてが八方塞がりで、何事も思うようにならない時。前に進もうにも進めず、動けば失敗が目の前にありありと見えているときである。
運気は無論最低の状態で、沈滞ムードである。
現在は何の動きもなく、未だ始まったばかりのときともいえるし、子供でいうなら物心もついていないほんの幼子のような状態で、外に出て行動するには余りにも危なっかしく、凡そ独り立ちには程遠い状態といえよう。
しかし、決して将来がないという意味ではなく、流れに逆らわず、徐々に基礎を固めながら努力し勉強していけば、前途には必ず光明の見えるときがあるから、今駄目だからと云ってやっていることを投げ出したり、失意して止めてしまわないようしっかりと心に留置くことが大切。
[嶋謙州]
泰と逆であります。外は陽気で極めて活発に行動するけれども、内には大したエネルギーを持っておりませんかれらすぐ行き詰まる。
あるいは頭もよく、弁も立つ、しかし人間の内容に立ち入って調べてみると、能力のない見掛け倒しである、というのがこの否の卦の特徴であります。
否は否定、否決などを表します。
[安岡正篤]
否之匪人。不利君子貞。大往小來。
否の人にあらざる、君子の貞に利あらず。大往き小来る。
彖曰。否之匪人。不利君子貞。大往小來。則是天地不交而萬物不通也。上下不交而天下无邦也。内陰而外陽。内柔外剛。内小人而外君子。小人道長。君子道消也。
彖に曰く、否はこれ人にあらざる、君子の貞に利あらず、大往き小来る、即ちこれ天地交わらずして万物通ぜざるなり。上下交わらずして天下に邦なきなり。内陰にして外陽なり、内柔にして外剛なり、内小人にして外君子なり。小人、道長じ、君子、道消するなり。
象曰。天地不交否。君子以儉徳辟難。不可榮以祿。
象に曰く、天地交わらざるは否なり。君子以て徳を倹め難を辟く。栄するに禄を以てすべからず。
初六。拔茅茹。以其彙。貞吉亨。
象曰。拔茅貞吉。志在君也。
初六は、茅を抜くに茹たり、その彙と以にす。貞なるときは吉にして亨る。
象に曰く、茅を抜く、貞なるときは吉、志し君にあるなり。
六二。包承。小人吉。大人否亨。
象曰。大人否亨。不亂羣也。
六二は、包承す。小人は吉。大人は否にして亨る。
象に曰く、大人は否にして亨るとは、群に乱れざるなり。
六三。包羞。
象曰。包羞。位不當也。
六三は、包羞す。
象に曰く、包羞す、位当らざればなり。
九四。有命无咎。疇離祉。
象曰。有命无咎。志行也。
九四は、命ありて咎なし。疇祉いに離く。
象に曰く、命ありて咎なし、志し行わるるなり。
九五。休否。大人吉。其亡其亡。繋于苞桑。
象曰。大人之吉位正當也。
九五は、否を休む。大人吉なり。それ亡びなんそれ亡びなんといいて、苞桑に繋れり。
象に曰く、大人の吉なるは、位正に当たればなり。
上九。傾否先否後喜。
象曰。否終則傾何可長也。
上九は、否を傾く。先には否がり後には喜ぶ。
象に曰く、否終えんとすれば傾く、なんぞ長かるべけんや。
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