天水訟(論争、訴訟/裁き裁かれる)
lowsuit:訴訟/conflict:衝突,対立
戦わざるが上策なり。謙譲を旨とすべし。
エゴ、自我の念を抑えて、時期を俟つべし。
飲食必有訟。故受之以訟。
飲食には必ず訟えあり。故にこれを受くるに訟を以てす。
訟とは、公の場で互いに争うこと。
人と人の争い(訴訟)は、和することが出来ない対立の状態、それぞれ求める方向性が違う為に起こる。
何となく心が落ち着かず、裏腹でわずらわしいことが起きがち。人間同士のトラブルや訴えが生じる時で、いろいろなことが裏目に出やすい。運勢は下り坂でパッとしない。
ともあれ、落ち着いて事態の収拾をよく考え、軽はずみなことや無鉄砲なことを極力避けて現状維持に努めることが大切。
運気が下降の時だから何事も積極的に出られないのが建前だが、どうしても物事に立ち向かわねばならぬのなら、あとの喧嘩は先にしておくとか、きれいごとで表面を取り繕ったりせず全部さらけ出してお互いに腹を割って話したりするほうがよい。
できれば何事も平和で円満に行きたいのが人情の常と云うものだが、それが思うように思うようにいかないのも世間の常と云うもの。くれぐれも隠忍自重心を忘れないように。
[嶋謙州]
訟は「うったえる」「せめる」という字であります。成長すると子供はいろいろと要求を始めます。その時にはあくまでもその「うったえ」を聞いて、正しく教えてやるのがよろしい。うるさいからといっていい加減にしたり、急いではなりません。
大象に作事謀始―事をなすには、始めを謀ることが大切である、とありまして事業を始めるのも教育と同じで、事業は始め、教育は幼少の時代を大切にしなければなりません。
仕事を始めるといろんな問題が起こってきます。これをきびきび解決しなければなりません。
これは一時的でなく将来にわたってやらなければなりませんから、特に始めが大切であると教えておるのであります。
[安岡正篤]
訟。有孚窒。愓中吉。終凶。利見大人。不利渉大川。
訟は、孚ありて塞がる。愓れて中すれば吉。終えんとすれば凶。大人を見るに利あり。大川を渉るに利あらず。
彖曰。訟。上剛下險。險而健訟。訟有孚窒。愓中吉。剛來而得中也。終凶。訟不可成也。利見大人。尚中正也。不利渉大川。入于淵也。
彖に曰く、訟は、上剛にして下険なり。険にして健なるは訟なり。訟は孚ありて塞がる、愓れて中すれば吉とは、剛来たりて中を得るなり。終えんとすれば凶とは、訟は成すべからざるなり。大人を見るに利ありとは、中正を尚ぶなり。大川を渉るに利あらずとは、淵に入るなり。
象曰。天與水違行訟。君子以作事謀始。
象に曰く、天と水と違い行くは訟なり。君子以て事を作すに始めを謀る。
初六。不永所事。小有言。終吉。
象曰。不永所事。訟不可長也。雖小有言。其辯明也。
初六は、事とするところを永くせず。小しく言うことあれども、終に吉なり。
象に曰く、事とすることろを永くせずとは、訟は長くすべからざるなり。小しく言うことありといえども、その弁明らかなり。
九二。不克訟。歸而逋。其邑人三百戸。无眚。
象曰。不克訟。歸逋竄也。自下訟上。患至掇也。
九二は、訟に克たず、帰りて逋る。その邑人三百戸にして、眚いなし。
象に曰く、訟に克たず、帰りて逋れ竄るるなり。下より上を訟う、患いの至るは掇れるなり。
六三。食舊徳。貞厲終吉。或從王事无成。
象曰。食舊徳。從上吉也。
六三は、旧徳に食む。貞なれば厲けれども終に吉なり。或いは王事に従えば成すなし。
象に曰く、旧徳に食む、上に従えば吉なり。
九四。不克訟。復即命。渝安貞。吉。
象曰。復即命。渝安貞。不失也。
九四は、訟に克たず。復って命に即き、渝りて貞に安んれば、吉なり。
象に曰く、復って命に即き、渝りて貞に安んずとは、失せざるなり。
九五。訟元吉。
象曰。訟元吉。以中正也
九五は、訟え元吉なり。
象に曰く、訟え元吉とは、中正を以てなり。
上九。或錫之鞶帶。終朝三褫之。
象曰。以訟受服。亦不足敬也。
上九は、或いはこれに鞶帯を錫う。終朝に三たびこれを褫わん。
象に曰く、訟を以て復を受く、また敬するに足らざるなり。
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