坤為地(地の包容性・臣下の道/母なる大地)
obedience:服従/receptive:受容・無事・誠実・生命・大地・安定受動
野心を抱かず、消極的に事に当たるべし。身辺難事多き時期なり。
目的控えめにすべし、されば達成されん。
良き助言者を得ることが肝要。物欲に走るべからず。
柔よく剛を制す道
地(坤)のはたらきは、万物を生み出し養い育てることであるが、地(坤)自体にその力があるのではなく、天(乾)の元気を受けてはじめて万物を生み出し養い育てることができるのである。
「坤」の卦は大地の象徴である。大地は静止しているが、しかも豊かな力を蓄えてあらゆるものを生み育てる。全部陰爻でできているこの卦は、「乾」の剛強、積極、男性的に対して、柔弱、消極、女性的を意味する。もちろん柔弱であるということは、剛強よりも劣っていることではない。天のエネルギーも地に受けとめられてこそ発現する。男性の精気も女性を得てはじめて新しい生命をつくる。
陰陽は対立しながら統一されているものである。
この卦は、消極を守ることによって積極をしのぎ、後れることによって先に立ち、柔よく剛を制する道を示している。
運勢から見れば最低の状態に見えるが、実際はそうでもなく案外平穏無事に見えることが多い。しかし、反面うだつの上がらぬことが多く、心は迷い勝ちで物事が優柔不断である。これから上向くか下向くかはその人の意志と努力次第で、ともすれば暖簾に腕押しのようなことになるから充分注意が肝要。
何事も控えめにして、人に従って自分が先立たないようにすること。現状維持を考えて深追いしたりしないことが大切。辛抱と忍耐はこの卦のモットーで、虚勢を張ったり不遜な態度をしたりして人に不快な思いをさせたりすることのないよう常に従順であるよう心掛けること。
運勢が弱いときには無理をせず流れが変わった時に進むことにしよう。
[嶋謙州]
乾の卦は各爻すべて陽であるのに対して、坤の卦はすべて陰である。
これを要約する言葉は『厚徳戴物』~徳を厚くし、物を戴す~
これは乾の徳、すなわち天地創造のエネルギー、力を受けて万物を生成しこれを包容すること。これが坤の特徴であり、本当の意味である。乾坤二つの卦で、天地万物の生成化育の実体と原則、本質が要約されている。[安岡正篤]
坤。元亨。利牝馬之貞。君子有攸往。先迷後得主。利。西南得朋。東北喪朋。安貞吉。
坤は、元いに亨る。牝馬の貞に利あり。君子往くところあり。先んずれば迷い、後るれば主を得。西南には朋を得、東北には朋を喪うに利あり。貞に安んずれば吉なり。
彖曰、至哉坤元、萬物資生。乃順承天。坤厚載物、徳合无疆、含弘光大、品物咸亨。牝馬地類、行地无疆。柔順利貞、君子攸行。先迷失道、後順得常。西南得朋、乃與類行。東北喪朋、乃終有慶。安貞之吉、應地无疆。
彖に曰く、至れるかな坤元、万物資りて生ず。乃ち天に順承す。坤厚くして物を載す、徳无疆に合う。含弘光大にして、品物ことごとく亨る。牝馬は地の類、地を行くこと无疆なり。柔順利貞、君子の行うところなり。先んずれば迷いて道を失い、後るれば順って常を得。西南には朋を得、すなわち類と行くなり。東北に朋を喪う、乃ち終に慶びあるなり。安貞の吉は、地の无疆なるに応ず。
象曰。地勢坤。君子以厚徳戴物。
象に曰く、地勢は坤なり。君子以って厚徳もて物を戴す。
初六。履霜。堅冰至。
象曰、履霜堅氷、陰始凝也。馴致其道、至堅氷也。
初六は、霜を履んで堅氷至る。
象に曰く、初六の霜を履むは、陰始めて凝るなり。その道を馴致して、堅氷に至るなり。
六二。直方大。不習无不利。
象曰、六二之動、直以方也。不習无不利、地道光也。
六二は、直方大なり。習わざれども利あらざるなし。
象に曰く、六二の動は、直ににして方なり。習わざれども利あらざるなきは、地道光いなればなり。
六三。含章可貞。或從王事。无成有終。
象曰、含章可貞、以時発也。或従王事、知光大也。
六三は、章を含む、貞にすべし。あるいは王事に従う。成すことなくして終わること有り。
象に曰く、章を含む、貞にすべし、時を以て発するなり。或いは王事に従う、知光大なり。
六四。括嚢。无咎。无譽。
象曰、括嚢、无咎、愼不害也。
六四は、嚢を括る。咎もなく、誉れもなし。
象に曰く、嚢を括る、咎なし、慎めば害あらざるなり。
六五。黄裳。元吉。
象曰、黄裳元吉、文在中也。
六五は、黄裳、元吉なり。
象に曰く、黄裳元吉なるは、文中に在ればなり。
上六。龍戰于野。其血玄黄。
象曰、龍野于戰、其道窮也。
上六は、竜野に戦う、その血玄黄。
象に曰く、竜野に戦うは、その道窮まればなり。
用六。利永貞。
象曰、用六永貞、以大終也。
用六は、永貞に利あり。
象に曰く、用六の永貞は、大を以て終わるなり。
文言曰、坤至柔而動也剛。至靜而徳方。後得主而有常。含萬物而化光。坤道其順乎。承天而時行。
文言に曰く、坤は至柔にして動くや剛なり。至静にして徳方なり。後るれば主を得て常あり。万物を含んで化光いなり。坤道はそれ順なるか。天を承けて時に行う。
積善之家必有餘慶。積不善之家必有餘殃。臣弑其君、子弑其父、非一朝一夕之故。其所由來者漸矣。由辨之不早辨也。易曰、履霜堅冰至。葢言順也。
積善の家には必ず余慶あり。積不善の家には必ず余殃あり。臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず。その由って来るところのもの漸なり。これを弁じて早く弁ぜざるに由るなり。易に曰く、霜を履んで堅氷至ると。蓋し順なるを言えるなり。
直其正也、方其義也。君子敬以直内、義以方外。敬義立而徳不孤。直方大、不習无不利、則不疑其所行也。
直はそれ正なり、方はそれ義なり。君子は敬もって内を直くし、義をもって外を方にす。敬義立てば徳孤ならず。直方大なり、習わざれども利ありからざるなしとは、その行なうところを疑わざるなり。
陰雖有美、含之以從王事、弗敢成也。地道也、妻道也、臣道也。地道無成、而代有終也。
陰は美ありといえども、これを含んでもって王事に従い、あえて成さざるなり。地の道なり、妻の道なり、臣の道なり。地の道は成すことなくして、代わって終わり有るなり。
天地變化、草木蕃、天地閉、賢人隱。易曰、嚢括、无咎无譽。葢言謹也。
天地変化して、草木蕃く、天地閉じて、賢人隠る。易に曰く、嚢を括る、咎もなく誉れもなしと。蓋し謹むべきを言えるなり。
君子黄中通理、正位居體。美在其中、而暢於四支、發於事業。美之至也。
君子は黄中にして理に通じ、正位にして体に居る。美その中に在って、四支に暢び、事業に発す。美の至りなり。
陰疑於陽必戰。爲其嫌於无陽也、故稱龍焉。猶未離其類也、故稱血焉。夫玄黄者、天地之雜也。天玄而地黄。
陰の陽に疑わしきときは必ず戦う。その陽なきに嫌わしきために、故に龍と称す。なおいまだその類を離れず、故に地と称す。それ玄黄は、天地の雑わりなり。天は玄にして地は黄なり。
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